睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ているときに何らかの影響で気道がふさがり、呼吸が妨げられている状態です。ほんの少しだとか、一時的なものだからと安心できません。睡眠中に無呼吸になると睡眠の質が下がるだけでなく、眠りが浅くて疲れが取れない、集中できないなど、生活の質までも影響する恐ろしい病気です。
日本では、睡眠時無呼吸症候群の潜在患者数は400〜500万人以上いるとも言われています。
睡眠時無呼吸症候群の症状は?
睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状としては、以下のことがあります。
- いびき
- 常に疲労感やだるさを感じる
- 寝ている時の無呼吸
- 起床時の頭痛
- 眠りが浅い
- 夜間の頻尿
- 日中の眠気
睡眠時無呼吸症候群の要因はさまざまです
睡眠時無呼吸症候群は、喉や上気道が狭くなり、空気が通る十分なスペースがなくなることによって呼吸が止まってしまうのが原因で起こります。
この現象を引き起こす要因は様々あります。
肥満体系
肥満で喉に脂肪がつくことで気道を狭めます。標準体型の人と比較して、肥満の人は発症リスクが3倍もあるともいわれています。
顎が小さい
顎が小さい人も無呼吸を発症しやすいと言われています。欧米と比較して日本人は細身で顎が小さい人が多いため、無呼吸の患者さんも多いと言われています。
加齢
口蓋垂(のどちんこ)の肥大、場気道を拡げる筋肉の低下、気道の弾力性の低下など。
睡眠時無呼吸症候群の性別比較
日本呼吸器学会によれば、睡眠時無呼吸症候群の割合は成人男性の約3〜7%、女性の約2〜5%だそうです。男性は生活習慣病の発症が増える時期に多く、女性は更年期以降に発症するケースが多いです。閉経前と比較して閉経後は発症率が3倍になるという報告もあります。
睡眠時無呼吸症候群のリスク
- 日中の眠気が原因となる交通事故、産業事故
- 高血圧、高脂血症、糖尿病、心疾患、脳卒中の発症のリスクが上がる
薬が効かない高血圧の方が睡眠時無呼吸症候群を合併している確率は約80%であるとも言われています。また、糖尿病、心疾患、脳卒中の発症率より約3倍も高いという報告もあります。
- 生存率に影響する
厚生労働省研究班の調査では、睡眠時無呼吸症候群で重症の場合、8年後の生存率が約60%まで低下するというショッキングな報告があります。軽症の睡眠時無呼吸症候群であっても、生存率が低下するそうです。
8年後の生存率が約60%まで低下するということは、統計上約4割が8年以内に亡くなってしまうということです。
- 日中の眠気が原因となる交通事故、産業事故
質の良い睡眠がとれないので、集中力の欠如による勉強や仕事・家事の能率低下、車の運転事故など社会生活に支障にもつながります。
居眠り運転による交通事故は健常者の7倍も高いという報告もあります。
睡眠時無呼吸症候群には2つのタイプがあります
睡眠時無呼吸症候群は、以下の2つのタイプがあります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
喉や上気道の空気の通り道が狭くなることで、呼吸が止まったり浅くなったりします。
医科と連携して歯科で対応できるのはこちらのタイプです。
中枢性睡眠時無呼吸症候群
脳の呼吸中枢に異常があり、呼吸が一時的に停止する状態のため歯科での対応はできません。医家での治療となります。
検査方法
睡眠時無呼吸症候群の診断は、循環器内科や耳鼻科など医科で行います。
歯科で対応する場合には、医科と連携して治療を行っていきます。
問診を行った後、睡眠検査装置を用いて診断を行います。装置を用いた検査は次の2通りです、どちらの検査を受けるかはお医者さんの判断になります。
・自宅でできる簡易検査
・病院に宿泊するPSG検査
治療方法は?
治療方法は、医科的なアプローチと歯科的なアプローチに分かれます。
1.医科的なアプローチ
*生活習慣の改善
体重管理、運動療法、アルコール制限など
睡眠衛生指導・睡眠習慣の改善
CPAP(シーパップ:Continuous Positive Airway Pressure)
持続陽圧呼吸療法ともいいます。睡眠中に鼻マスクを装着し、呼吸に合わせて空気を送り込むことで無呼吸を防止する治療法です。閉塞性睡眠時無呼吸タイプに有効な治療方法として、現在欧米や日本国内で最も普及している治療方法です。
耳鼻科的外科処置
手術を行うことで、狭くなっている上気道を広げる治療法です。術後の後戻りなど予後(治療結果)の予測が難しいことから、睡眠時無呼吸症候群の治療としては現在主流ではありません。
2.歯科的アプローチ
*小児歯科矯正(マイオブレースなど)
小児期に顎の成長を促し、将来の顎の劣成長を抑制する治療です。睡眠時無呼吸症候群は顎が小さい(成長不全・劣成長)ことも原因のひとつなので、歯科矯正で症状の改善が期待できるケースがあります。
口腔内装置(オーエー:Oral Appliance)
オーラスアプライアンスとも呼ばれ、上下の歯にマウスピースを装着する治療法です。
下あごの位置をけん制・保持することで気道の面積を拡大し、睡眠時の呼吸をスムーズに行えるようにします。装置の種類としては上下のマウスピースが一体となったタイプと分離したタイプがあります。
保険診療で装置を作製する場合、医科での診断が必要です
医科により適応と認められた場合、マウスピースも保険適応になります。歯科で治療する前に必ず以下で診断を受けて下さい。