硬いものを食べる機会が減り、あごが未発達になりつつある近年。
歯並びの悪さにコンプレックスを感じている方や、子どもの歯並びが気になっている親御さんは少なくないと思います。
ここでは、噛み合わせの悪さが身体に与える影響や、歯並びの治療の種類とその特徴をご紹介します。
歯並びが悪いといけないのですか?
歯並びが乱れていると見た目が気になるだけでなく、虫歯をはじめとした口腔トラブルも起きやすくなりますし、健康にも悪影響があります。代表例をまとめました。
顎関節症の要因になりうる・・・
歯に過度に負担がかかり、最終的にはものをかむ際の起点となる顎関節へ負担がかかりやすくなります。(近年では歯並びが悪いからと言って必ずしも顎関節症になるわけではありません)。
不眠症・・・
あごや全身に力が入って安眠できない場合があります。脳も活動的な状態になってしまい、常に脳が起きた状態で眠ることが出来なくなることもあります。最近よく耳にする「睡眠時無呼吸症候群」も歯並びに関連しています。
視力の悪化・・・
咀しゃくは顔の筋肉と関連があり、視力にも影響を及ぼしています。よく噛む子の視力は良く、噛まない子の視力は低いという結果が出ています。かみ合わせが悪いと眼球を圧迫して仮性近視となってしまうことがあり、そのまま放置すると真性の近視になってしまう場合があります。
消化不良・肥満・・・
物を充分に噛まずに飲み込んでしまうので、消化不良になります。また噛むことによって脳に送られる刺激が減少して、満腹感が得られにくく、食べ過ぎて肥満の原因になります。
高血圧・・・
偏った歯の使い方をしてしまうことで、首の筋肉を圧縮させ、動脈を圧迫してしまいます。すると血液の循環が悪くなり、心臓に負担がかかり、高血圧を招いてしまうことがあります。(あまりピンと来ないかもしれませんが、そのような事例報告があります)
他には…
・汚れが溜まりやすくなり、虫歯や歯周病になりやすくなる。
・食事を上手にできなくなる
・発音がしにくくなる
・顔の歪みが起きてしまう
などの問題が考えられます。
歯並びは直さないといけませんか?
時間も治療費もかかることなので、迷われるのは当然のこと。歯並びが見た目にも健康にも影響していることを考えると、放置できない問題だと思います。歯全体も健康に長持ちしますし、全身の健康にとっても大きな価値があります。
虫歯を治療と歯科矯正も両方行っている歯科もありますので、まずは歯医者さんで相談することがお勧めです。
どんな治療方法がありますか?
歯並びを直す治療は2種類の方法に分けられます。
審美(しんび)修復:歯を削り、セラミック冠などを被せることによって治す方法。
メリット:短時間で効果が期待できる。
デメリット:強度を保つために健康な歯でも大きく削る必要がある。歯並びがかなり悪い場合は選択できない治療法です。
矯正治療:器材の装着により圧力をかけることで悪い歯ならびや噛み合わせを整え、きれいな歯並びにする方法。
メリット:健康な歯を削る必要がない
デメリット:治療に時間がかかる、
一度削った歯は元には戻りませんので、なるべく削りたくないですよね。メリット、デメリットを考慮して、慎重に治療方法を選びましょう。
※なお、歯周病が大きく進行している場合には、審美修復も矯正歯科もオススメはできません。まずは歯周病治療を優先しましょう。
結局、どの治療法がいいですか?
歯並びは年齢や部分、範囲によって矯正治療法が異なります。
お口の状態は人それぞれです。一度診させていただき、あなたの悩み、質問を聞いた上で、あなたに合った適切な治療方法、治療計画を提案させていただきますので、お気軽にご相談ください。
ここでは治療法選択のヒントを2つご紹介します。
・年齢によって判断する
大人の矯正治療法:
・ブラケットと呼ばれる固定装置を使ったワイヤー矯正。(従来からの矯正方法)
・透明なマウスピース装置があります。(最近の矯正方法)
販売職、営業職などのサービス系の職業の方、結婚を意識されている方には、周囲の人に目立たないような形で行える透明なマウスピース矯正が人気です。
子供の矯正治療法:
床矯正(しょうきょうせい):あごの成長期を正常にしていく治療法です。口呼吸などの悪習慣から改善も期待できます。
取り外し可能な矯正器具を使うので、虫歯になりにくいのこと、抜歯の必要が無いことがメリットです。(逆に、お子さんが自分で外してしまうケースもあるので注意が必要です)
5~8歳頃であごが発達途中であるお子さん向けです。
中学生頃~
ワイヤー矯正(舌側矯正もできます)。マウスピース矯正。最近はどちらも透明な素材が出回っているので、多感な年頃でもおすすめです。
・治療箇所や範囲、症状から判断する
前歯の歯並びが少し悪い場合:
マウスピース矯正で前歯だけのプチ矯正(部分矯正)もできます(アクアシステム)。歯に取り外し可能なマウスピースをつけて行う矯正で、早ければ矯正治療開始から5ヶ月で歯列矯正が終わります。
透明タイプが人気です。インビザラインと比べると国産で割安、しかし矯正範囲は狭いです。
矯正治療中で痛みがある場合は遠慮なくご相談ください
矯正のワイヤー装置やマウスピースを入れて2、3日は、痛みが出ることがあります。これはあご骨の上を歯が移動し、噛み合わせが変わるために起きるのである程度は避けられません。
痛みは徐々に取れていきますが、がまんできない場合には市販の痛み止めを使っていただいて大丈夫です。
特に治療初期は痛む場合が多いので、治療の時に歯科で痛み止めの処方を希望することもできますのでご相談ください。
成人矯正治療について