歯を磨いただけで血が出てきましたが、病気でしょうか?
はい、歯周病が疑われます。歯茎が炎症を起こして腫れていると、ちょっとした刺激でも血が出るようになります。(30年以上前に「歯ぐきから血が出る人へ」という歯磨き粉のCMが流行りましたが、まさに歯周病の症状その通りです。)
歯周病の主な症状は次の通りです。
<歯周病の主な症状>
・歯茎がよく腫れる
・血が出る
・歯がグラついてきた
・歯と歯の間にものが挟まるようになってきた
・口臭が気になる
歯周病は、ただ歯茎が腫れるだけのものだと考えられがちですが、実はそうではありません。
痛みがないまま進行し、ひどければ歯を失ってしまったり、全身の病気にもつながる恐ろしい病気です。
歯ぐきから血が出るのは、どれくらいマズイですか?
出血が気になり始めたのなら、まだ軽度の段階と思われます。歯周病は次のように進行します。
<軽度歯周炎> 歯茎の中の骨(歯槽骨)が溶ける
↓
<中度歯周炎> 軽度の歯周炎がさらに悪化
↓
<重度歯周炎>歯がグラついてきて、歯を失う。
歯肉の炎症は痛みが無いので、無自覚のうちに悪化してしまいます。
日本人が歯を失う一番の原因は、実は虫歯ではなく歯周病です。歯茎の腫れや、周囲から口臭を指摘されることで歯周病に気が付くこともありますが、その場合にはかなり状態が悪くなってしまっている場合がほとんどです。
歯茎から血が出ている段階なら、まだ間に合います。歯科に通い、ケアの仕方を相談しましょう。
歯周病はどんな病気と関係がありますか?
最近の研究では、歯周病尾が起こす炎症によって生じた炎症性物質(毒性物質)が全身に運ばれ、糖尿病、心臓病、脳卒中などの病気を悪化させる可能性があることがわかっています。
糖尿病
炎症性物質が血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせることがあります。
心臓病
炎症性物質が心臓に行き感染を起こすと、細菌性心内膜炎を引き起こす危険性があります。
脳梗塞
炎症性物質が動脈から血流にのって脳に至り血管にプラーク(歯垢)が詰まったり、動脈硬化を引き起こしたりして、脳梗塞を引き起こす危険性があります。
ここで紹介するのはほんの一部で、歯周病は他にも多く病気の引き金になり得る病気です。歯周病予防や早期の治療は、健康寿命に大きくかかわっています。
歯周病が怖いです。何をしたらよいですか?
歯周病は、一度進んでしまうとなかなか治らない病気です。
現在のところ、悪化してしまった歯周病は、高い歯磨き粉や洗浄液を使っても自宅で治すことはできません。予防が大切です。
歯垢が付きやすい歯と歯肉の境目を意識して磨いたり、歯科で定期的に歯石除去を受けるようにしましょう。
定期的なメンテナンス(歯周治療)で歯石除去を行うことで、歯肉が健康的な状態に回復し、大切な歯を長く維持することができます。ソニックケアー等の電動歯ブラシを使った歯周病ケアもおすすめです。
定期検診ではどんなことをしますか?
歯科の定期検診は、次のようなことを行います。日本は北欧に比べて歯科の定期検診を受ける人が少ないですが、必要な都なので積極的に受けましょう。(大人は3か月から半年に1度が望ましいです)
・歯磨き(ブラッシング)の指導:
歯磨き粉、歯ブラシ(歯周病用歯ブラシ)、歯間ブラシの使い方、前歯の裏の磨き方など、患者さんの状態に合わせたアドバイスをします。
・歯周ポケット検査(歯周病検査):
歯周ポケットの深さやレントゲンから歯周組織の状態を把握して、今の歯肉炎、歯周炎の状態がどの程度進行しているのか判断します。(初期歯周病~歯槽膿漏)
・歯石除去:
歯石とは、一言でいうと歯垢が固まったもので、ご自分で除去するのは困難です。歯科では超音波などを用いて歯石を破壊し水で洗いし、大量の歯石も短時間ですっきりと除去することができます。先のとがった器具を用いて、1本1本歯石を取っていく方法もあります。
自宅でとがったもので歯石を取ってみたくなりますが、医師の立場から申し上げますと大変危険です。健康な歯も傷つける危険性があるのでやめましょう。
歯周病の治療方法は?
治療法には、患部に歯周病菌の薬を塗ること症状を改善させる歯周内科治療のほか、歯茎を切開する歯周外科手術が有名です。
これらの治療法は先生の専門によって治療方針が異なりますので、事前に調べて相談をすると良いでしょう。
まとめ
ひと昔前ですと歯周病は治療困難な病気でしたが、近年歯科医学の進歩により、予防・治療・回復ができるようになりました。軽度歯周病、中度歯周病、重度歯周病と症状が進むほど完治は難しいので、できるだけ早い段階で受診し治療・予防することが大切です。
歯周病は年齢に関係なく、子供から大人まで多くの人がかかる病気です。油断しないで定期健診に通う習慣を付けましょう。