歯が欠ける、折れる、抜けるなどの原因を教えてください
体の中のどんな組織よりも固い歯ですが、ふとしたことで欠けたり、折れてしまうなどは誰にでもあります。歯の損傷にはどんな原因があるか見ていきましょう。
①虫歯
虫歯ではないはずなのに、硬いものを噛むと歯が欠けてしまうことがあります。
これは、歯の外側よりも内側のほうが溶けやすい性質の素材なので、歯の内側が虫歯になってしまったために起こります。(これを歯の空洞化といいます。)
中高年になるとおせんべいやするめなど硬いものを食べて歯が欠けちゃった、という話をよく聞きますよね。加齢が原因の場合もありますが、実は見えないところで虫歯が進んでいる可能性があります。若い人も注意しなくてはなりませんね。
②歯ぎしり、食いしばり
歯ぎしり、食いしばりで歯にかかる荷重は、その方の体重の2~3倍ほどの力がかかることもあると言われており、歯に大きな負担がかかります。(例えば、体重100kgの人だとなんと200~300kg!)
特に神経を抜いてしまった歯は、歯に栄養が行き渡らなくなり、もろくなってしまうので注意が必要です。
睡眠時の歯ぎしりでお困りの方は、マウスピースを装着して歯を守る対処法があります。治療は保険の適用となりますのでご相談ください。
③外傷
運動中や日常生活の中での転倒、衝突などによって欠けたり折れたりすることがあります。
ずっと痛い場合、急に痛みが無くなった場合、どちらも歯の神経への影響が心配ですので、すぐに歯科を受診しましょう。(歯以外にも、口内を負傷していることも多いです)。
すぐに影響が出なくでも、3か月から1年間は様子を見ることをお勧めします。(定期健診に通いましょう)
④酸蝕歯(さんしょくし)
あまり馴染みのない言葉ですね。甘いものが歯に悪いのご存じかと思いますが、酸も歯に悪影響を及ぼします。歯の表面はエナメル質という硬い材質で覆われていますが、口内環境が賛成に傾くとエナメル質が柔らかくなります。
その原因はpH5.5より酸性に近い飲み物や食物で、健康に良いといわれる野菜ジュースや酢の物、果物も含まれます。
その状態で強いダメージを受けると歯が削られやすいのです。食後の歯ぎしりや、強すぎる歯磨きには注意しましょう。
どんな治療法がありますか?
破損の大きさ、場所によって治療法が異なります。保険診療と自由診療の特徴も一緒に見てきましょう。
【破損が小さい場合】
→レジン充填と呼ばれるプラスチックの白い詰め物を用いて保険治療で比較的簡単に治すことができます。
欠けた部分だけを詰めて修復できるので、歯を余分に削らなくて済むのが利点です。レジンはセラミックと比べると汚れが付きやすく、柔らかい素材なので欠けてしまうことがあります。定期健診を積極的に受けましょう。
【中程度の破損の場合】
→全体に冠を被せて処置します。
・前歯の場合
保険診療:金属のフレームの上にプラスチックを盛る被せ物治療(補綴治療)となります。
自費診療:オールセラミック冠が一般的です。
・奥歯の場合
保険診療:被せ物が銀歯かプラスチックの歯になります。詰め物であれば、銀の詰め物になります。
自費診療:セラミック冠またはセラミックインレーと呼ばれる白い詰め物(セラミック治療)になります。
・破損が大きい場合
・神経が生きている場合
→全体に冠を被せて処置します。
・神経が露出している場合
→神経を取り、根っこの治療が必要となります。(根管治療)
神経を取った歯は栄養が通わなくなるので脆くなり、破折のリスクが高まります。土台を入れから、強度を出すために全体に被せ物をする形をとります。
【大きく破折した(折れた、抜けた)場合】
→骨縁下組織に届くまで歯が大きく欠けた場合は、抜歯が必要となります。
抜歯した場所はそのまま放置しておくと、噛み合わせが悪くなり、更に歯を失うことになります。入れ歯やインプラントなどの治療が必要です。
両隣に歯がある場合は、ブリッジで治療することもできます。
歯が破損したときに気を付けることを教えてください
応急処置として、この3つを必ず守ってください。
・欠けた部分には触らない
・適切な保存を心がける(手に入りやすい保存液は牛乳です)
・できる限り早く歯科医院へ行くこと
※この処置を迅速にすることで、歯を残せる可能性がぐんと高くなります。
(30分以内であれば歯根幕が再生しやすいと言われています)
牛乳に漬けるなんて迷信じゃないんですか?
抜けた歯や歯の破片を牛乳に浸けておくのが望ましいのは本当です。
牛乳は口内に近いpHをなので、乾燥を防ぎながら、歯根の表面に付着した歯根膜組織を良い状態に保つことができるのです。
反対に、水道水に漬けたり、ゴシゴシ汚れを洗い流すと歯の組織が悪化しますので気を付けましょう。
保険診療と自費診療で迷っています
保険診療と自費診療、どちらにするか迷いますよね。
ひと昔前までは大きな虫歯、欠損の治療は銀歯が主流でしたが、ここ10年ほどで歯の色に近い素材による治療も進み、見た目もかなり改善されてきています。(レジンがそのよい例です)
しかし、強度や見た目の美しさではやはり自費診療にかないません。
自費診療は保険診療と比べて治療費がかさみますが、金属アレルギーや毒性の心配もないで、見た目がとてもきれいになります(周りの人から見てもほぼ治療済だと気付かれません)。銀歯から高品位セラミックに付け替える人も多いです。どんなことでも歯科にご相談ください。